
書きおこし(STARTUPS SELECTION® TOKYO特集)
【第16回】モノのNetflixを目指す、ベトナム人起業家。
2021.08.10
新進気鋭な若⼿スタートアップ起業家たちにスポットライトを当てる、ラジオ番組×雑誌×webメディアの連動プロジェクト「STARTUPS SELECTION® TOKYO」。第16回目ゲストは、リフリード株式会社取締役兼COO のレクァン フィジュンさん。仕事や日常で使うアイテムのレンタルサービスを運営するベトナム人経営者だ。今回はサービス誕生の経緯や働き方に対する考え方、起業を目指す人へのアドバイスなど幅広いお話を伺った。
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Contents
リフリード株式会社 取締役兼COO レクァン フィジュンさん
YAZAWA:本日のゲストは仕事や日常に関するアイテムのレンタルサービス「flarii(フラリー) 」やマーケティング支援・人事支援サービスを展開するリフリード株式会社のレクァン フィジュンさんにお越しいただきました。レックさんはベトナムのご出身なんですよね?
レクァン フィジュンさん(以下、レック):はい。父親も母親もベトナム人なので100%ベトナム人です。
今34歳なんですけど、1歳の頃に初めて日本に来て、そこから行ったり来たりの生活をしています。日本はトータル30年くらいですね。
YAZAWA:通りで日本語が全く違和感ないんですね。
早速ですが、現在の具体的なお仕事内容を教えていただけますか?
レック:弊社はflarii(以下、フラリー)というレンタルサービスをやっています。世の中に溢れている様々なモノを、月額レンタルやシェアリングを活用して、お客様に提供するサービスです。
YAZAWA:サイトを拝見しましたが、Nintendo Switchなどのゲーム機やパソコンのレンタルが結構多いんですね。あと美容家電など、気になるけど簡単に手が出ないようなのものをレンタルでお試しできるのがいいですね。
レック:ありがとうございます。今はテレワークやおうち時間に役立つアイテムを特に充実させています。ジャンルは現在80種類以上ありまして、将来的に目指しているのはモノのNetflix。フラリーで使いたいモノがいつでもすぐ見つかる、みたいなサービスにできたらと思います。
YAZAWA:ちなみに創業されたのは2019年とのことですが、そのタイミングからずっと今のサービスをやられているんですか?
レック:厳密にはサービスを1回ピボットしています。2019年のスタート時には旅行向けにモノを貸し出していたんですが、2020年の緊急事態宣言時に、テレワーク向けという形に切り替えました。
YAZAWA:コロナ禍において方向転換をされたんですね。 初めに旅行のレンタルサービスを始めたきっかけって何だったんですか?
レック:旅行にフォーカスしたのは自身の体験がきっかけですね。共同創業者の田村を含む仲の良い男友達5人で毎年のように沖縄旅行に行っていたんです。 ある年、楽しすぎて帰り際にモノをたくさん買ったんですよ。泡盛とかいろんなお土産をフライトのギリギリまで買いました。その結果、LCCの荷物制限に引っかかりまして、フライト直前にモノを捨てるか飛行機に乗らないかの2択を迫られまして…。
YAZAWA:それは辛い。究極の選択ですね。
レック:それで泣く泣く買ったばかりのモノを捨てて帰ったんですね。その時にお土産以外にも洋服や遊び道具などがたくさん鞄に入っていたから荷物制限に引っかかったんだなと思いまして。その経験をきっかけに、旅行者をもっと身軽にさせてあげたいと思って、旅行先でモノを借りられるサービスを作ろうと考えました。
YAZAWA:確かに旅行って少しでも荷物を減らしたいので、旅先で必要なモノをレンタルできたら便利ですね。
レック:2019年はそれでスタートして旅行ブームにも乗って順調にいっていたんですが、コロナ禍になって誰も旅行に行かなくなってしまいました。そのため、テレワークを充実させるパソコンやゲーム機などを貸し出すサービスに方向転換しました。
YAZAWA:どのくらいのタイミングで方向転換を決断されたんですか?
レック:構想は1か月ぐらいで、実際は2週間でこのビジネスモデルを作った感じですね。 2020年4月7日に1回目の緊急事態宣言が発令されました。発令される1ヶ月前くらいから、「どうやら外に出れなくなるらしい」というニュースで飛び交うようになっていて、弊社のビジネスが打撃を受けることは明白でした。そこで対策を考え始めて、4月7日の発令と同時に新しいサービスをリリースしました。
YAZAWA:元々レンタルサービスのノウハウがあったので、短期間でスムーズに移行できたんですね。
レック:そうですね。一部在庫はすでにありましたし、レンタルしたいというお客様ニーズもあったので比較的スムーズに移行できたのかなと思います。
YAZAWA:そんな中でもサービス変更で苦労されたことって何かありますか?
レック:一言で言うと、資金がショートしかけました(笑)
弊社は自己資金で、僕と田村が経営をしています。今回のビジネスモデルは先行投資型なので、パソコンやゲーム機といった高額商品のコストが始めにかさむんですよね。 嬉しい悲鳴ですが、注文が想定以上に入りまして、高額商品をバンバン買ってたらある月にハッとしました。今月分のメンバーの給料は払えるけど、もしかしたら僕と田村の給料は払えないんじゃないかと…(笑)その時はヒヤッとしましたね。
YAZAWA:完全に自己資金でやられているのが本当に凄いですが、それは内心焦りますね。その時はどうやって乗り越えられたんですか?
レック:様々な手を打ったのですが、乗り越えられた一番の秘訣は、「やるしかないというベンチャーマインドと徹底したコストカット」です。スタートアップはこれに尽きますね。
副業ではなく、全てを本業にする複業のススメ。
YAZAWA:コロナ禍になって働き方はどのように変わりましたか?
レック:発送業務で出社することもありますが、基本はリモートワークをしています。Slackを使って日々の業務内容を報告してもらったり、Zoomで月1回は集まる時間を作ったりしてメンバーとコミュニケーションをとっていますね。
YAZAWA:リモートになってからやってよかった取り組みって何かありますか?
レック:1on1はやってよかったですね。 1対 1でメンバー全員と、Zoomで月1回雑談する時間を作っています。メンバーの温度感が測れるので15分でも30分でもそういった時間は大事だと思っています。
YAZAWA:今メンバーの方は何名くらいいらっしゃるんですか?
レック:業務委託の方が多く、今は20名程ですね。
YAZAWA:20名と月1で1on1するってなかなか大変ですね。皆さんとどんなお話をされるんでしょうか?
レック:メンバー1人1人仕事で得たいものが異なるので、話したいことや相談したいことを各自事前に決めてもらっています。
業務委託の方は、弊社意外に複数のお仕事をしている人が多いのですが、よくメンバーにはサブの「副業」ではなく、全て本業の「複業」で取り組んでほしいと伝えています。 複業だからこそ、弊社で何かを得て成長してほしいし、その何かは1人1人異なります。 人によってお金だったり、スキルだったり、人脈だったり。 そのため1on1では「もっとスキルを上げるのはどうしたらいいですか?」とか「起業したいのですが、資金調達をするにはどうしたらいいですか?」など、人によって話題は様々ですね。
YAZAWA:経営者がフラットに相談に乗ってくれる環境は有難いですね。 メンバーとそんな関係性を築けているのがとても素敵です。
最近のオススメ。心をリセットできる愛読書。
YAZAWA:続いてプライベートについても聞いていきたいと思います。
レックさんは将棋が特技だとお伺いしましたが、昔からやられているんですか?
レック:将棋は大学の時からずっとやっているので10年位ですかね。一応アマチュアの初段を持っているので、アマチュア外国人で1番強いかもしれません。少なくともベトナム人だと1番強いと自負しています(笑)
YAZAWA:すごい腕前ですね。ぜひレックさんに挑戦したい方がいらっしゃったら番組までご連絡ください!
レック:お待ちしています!
YAZAWA:最近のオススメがあれば教えてください。
レック:加島 祥造さんの「求めない」という本です。これは座禅を組んでるかのような気持ちになる本で、見開き右側に「求めない」と一言だけ書かれていて、左側に「なぜなら〇〇だから」と書かれているページが続きます。サクサク読めて、スッと言葉が心に入っていきます。
ふと世の中を見渡した時、モノや情報が溢れかえっているのに、なぜかその見返りを求める風潮が強い気がしています。だからこそ、この本を読むと心がリセットされるので、たまに見返すようにしています。個人的には2020年のベスト本ですね。
YAZAWA:なるほど。初心にかえれる本なんですね。
レック:そうなんです。経営者でも誰しも心がすさんだり焦ったりすることがあると思うんですけど、そういう時こそ平常心を保つという意味でこの本はオススメです。
帰化しない理由。ベトナム人をブランディングの武器に。
YAZAWA:レックさんは日本に国籍を移そうと考えたことってあるんですか?
レック:今のところ考えていないですね。僕には弟がいるんですけども彼は日本国籍に帰化しているので、兄弟で国籍が違う状態です。
ちなみに、僕が帰化しない理由は、一言でいうとブランディング。目立つからです。外国人のレックとして発信することにメリットを感じています。例えば、帰化すると名前を変えなきゃいけないので、僕が鈴木って名乗ることもできるんですが、そうなったら世の中の鈴木さんと戦わないといけない。イチローさんとかライバルが多すぎます(笑)
YAZAWA:確かに検索でも同姓同名が何万件も出てきそうです(笑)
レック:もちろん不便なこともあるんですけどね。ビザが取りにくいとか常に外国人登録証明書を持ち歩かないといけないとか。
あと国籍や名前が違うということで、大小限らない差別みたいなことがあるかもしれない。でもそれってどの国でもどの人でも起こりうることなので受け入れています。むしろそれを逆手にとって面白いことがしたいですね。僕の場合は外国人であるメリットの方が大きいと思っているので死ぬまでレックでいこうと思います。
YAZAWA:レックさんらしいポジティブな発想ですね。 日本ではなくベトナムで起業することは考えなかったんですか?
レック:実は家業で、日本の果物をベトナムに輸出する貿易会社を経営しています。ベタな言葉ですけど、日本とベトナムの架け橋になればいいなという想いはありますね。
YAZAWA:レックさんご自身も複業を体現されているんですね。
レック:そうですね。僕の中では「死」っていうのは結構キーワードとしてあって、限られている人生だからこそ全力で走りたいなと。もちろん休むことも大事なんですけど、24時間を出来る限り有効活用して「複業」をやっていけたらという感じですね。
起業を目指す若者への2つのアドバイス。
YAZAWA:起業したいと思っている方へのアドバイスをお願いできますか?
レック:大きくて分けて2つあると思っていて、1つ目はアクション。 まず動くことですね。やりたいと思ってる人はたくさんいる思うんですけど、エイヤーで 動き始めることがまず大事。
2つ目は人。どんな人と一緒にやるかはすごく大事だと思っています。有名な例だと「誰をバスに乗せるか」っていう話は好きです。行き先を決めてからメンバーを集めるのではなく、一緒に行きたいメンバーを集めてから行き先を決めるという方法ですね。そっちの方が組織して強いんじゃないかなと思っています。今いる20人のメンバーもそうですし、これから増えていくメンバーも、僕と田村が本当に一緒に進みたい人を集めて新しい道を作っていきたいですね。
YAZAWA:最後に今後の展望を教えていただけますか?
レック:今後の目標はIPOですね。このサービスをより多くの方に届けたいという想いがまず1つ、もう1つはベトナム人経営者として何か1つ箔をつけたいという意味でも上場は目指していきたいですね。
YAZAWA:IPOしたらベトナム人経営者第1号かもしれませんね。ぜひ駆け抜けてほしいです。
レック:僕は海外で活躍している野球の大谷選手みたいな存在を目指しています。あまり野球を知らない日本人でも大谷選手が大活躍したら何か嬉しかったりするじゃないですか。だからベトナム人にとってそういう存在になりたいですね。「よく知らないけど日本で活躍しているベトナム人がいるらしいぞ」と少しずつ情報発信できたらいいなと思います。
YAZAWA:それはベトナムの若者に勇気を与えますね。レックさんの益々のご活躍に注目しています。本日は貴重なお話をありがとうございました!
■「STARTUPS SELECTION® TOKYO」第16回目放送
YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=3uuYG-E3I1k
ゲスト
■レクァン フィジュン
リフリード株式会社取締役兼COO
早稲田大学商学部卒業後、アメリカ留学。鉄鋼商社にて営業、レバレジーズ社にて採用コンサルティングに従事した後、サイバーエージェントグループにて人事を約6年経験。 その後独立し、ベンチャー企業数社の人事コンサルティングを行いながら複数社を経営し、総合レンタルサービス『flarii』などを運営。
パーソナリティ
■YAZAWA(やざわ)
元・株式会社nene 代表取締役。2018年にネット秘書サービス「nene」を創業後、2020年に事業を売却。株式会社Wizが子会社化。代表取締役としてサービス拡大に従事したのち、自身の会社で新しい事業の立ち上げを行う。
■URUSHI(うるし)
株式会社OKPR 代表取締役。2016年に「OKPR」を創業後、2020年にM&Aにて株式会社VOYAGE GROUP(CARTA HOLDINGS)入りする。情報経営イノベーション専門職大学の客員教員や、東京都やEY新日本監査法人が主催するプログラムにおいてメンターも務める。課外活動として「サムライ広報会」も主宰中。
flarii(フラリー)
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